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執筆者の写真秋山妙子

自然な前向き


父が癌の内視鏡手術をしてから毎日家族にメールが届きます。

父とは昔からメールや手紙でやり取りしていますが、彼の行動記録が仔細に書いてあるだけ。

感情や情景描写が極度に削ぎ落とされていて、山下清の理数版を思わせる唐突な文章。

私の悩みに対して

「了解しました。朝6時からはラジオ体操です」

という返信が来たこともあって、変な気持ちになることも多い。笑

今朝のメールがこれ。

「今朝飯を食べ終わりました。薄味で素材の組み合わせも日本的でよく煮込んだり焦げずに焼いたり毎食美味しく食べています。調理の参考にレシピをまとめてあります」

病院食が不味いという声が普通に耳に届く昨今、食事が美味しいという父のメールは新鮮だった。

私は「感謝をアウトプットしてる私♫」的な腹黒さが見え隠れする文章が大嫌いなので、

呼吸をするように自然な感謝が水打たれた文面に、父の佇まいを味わった。

父はところどころ病的に感じられる個性的な思考や感受性の欠落や強いこだわりがあるため、家族全員が口アングリみたいな時もある。

私も思春期には嫌悪に嫌悪を重ね、残酷な対応しかしてこなかった。

変人だけど好奇心旺盛で、いつ話しても面白い。

理想的な歳のとりかた。

お互いを許容し合う時期としては、もしかしてここ数年がピークかも知れない。

これから異質な部分が膨れ上がり、面倒な爺になっていくのかも知れないけど、私のルーツが父であることは嬉しいことだと思います。

春一番が空を清め、突き通りすぎて平面に見える、タレルの作品のような薄い青空。

今日も良い日に。


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