帰りの夜道でいきなり、乾いた薄いものが大量に降って来る素敵な音がした。
なになに、なに?
歩きスマホの返信を止めて立ち止まったら、風も無いのに公園のトウカエデが、さかんに葉を落としていた。
それを見て思い出した、前もそんなことがあった。夜。
他の木は静かにしているのに、トウカエデだけさらさらと葉を落としていたんだ。
その木の下に立って録音のアプリを立ち上げ、次のサラサラがやってくるのを待ったけど、もう降って来なかった。(植物というのはそういうものなのである)
昔昔マガジンハウスのクロワッサンという雑誌で大切にとっておいた特集、「大きな魚を1匹食べつくす」に、「鯛の鱗だって、油で揚げて食べますよ」があった。
透明な鱗の写真があって、「さらさら。さよけき音」と書いてあった。
トウカエデの葉が落ちる音も、さよけき音。
また私が通る時に、さらさらしてちょうだい。
見ていると、わざわざ落ち葉が積もった場所を選び、よく乾いた落ち葉が砕ける足裏の質感を楽しんで帰るのは、子供と犬(と私)。
皆さんも楽しみましょう。
良い夜を。