インディアンサマーの日中、エレベーターに乗ってそれぞれが降りたとき、
最後に残った白髪のおじさんが
「あんた。外は寒いのかい」
と聞いてきた。
「今日はあたたかいと思います」
と言ったら、籠の中が穏やかになった。
しかしおじさんは
「油断しちゃいけない、もう大丈夫だと思っても、これから寒くなるんだから」
と顔をしかめてから、
「春は、そう簡単には来ないもんだ」
と人生の長(オサ)のように締めくくって、降りていった。
白髪の人に重々しげに言われると、春が来るにはあと2、3人出産でもしなくてはいけない感じがした。
するっと来ちゃう春もあるかも知れませんよ、と言いたかったけど、
おじさんの言う「春」とは、いつもそうなのだろう。
次は能天気なおじさんの春の定義も聞いてみたいものです。
明日会える方、また、明日。 お会いできない方も良い一日をお過ごしください。