極度の近視のまま、ブルーライトで淀んだ裸眼を夜の冷気で洗うべく、 とっぷり暗くなった公園脇の並木道を歩いていたら、 いきなり真っ黒な影が元気に立ちはだかってきて、
「すいませんいま何時ですか」
と聞いてきた。
私はなぜか小学生(の男の子)に時間を尋ねられることが多く、 そのうち、時間を告げるだけでは面白くなくなってきたので、 「何時でしょうか」と尋ねてから教えることに決めている。
「何時だと思う?」と言うと皆なかなか良い線で時刻を述べる。
「えっと・・・・6時くらい」 「おお、近い。17時55分だよ」 「7時!?」 「17時。夕方5時55分です」
「5時55分だってよー!!」
お礼を言ったか言わないか覚えてないけど、その子はそう叫びながらまた暗い公園に飛び込んで行った。
こういうとき、そうか、時計も持たず、スマホも持たず、元気に遊んでいるのだな、と思う。
時間聞きはだいたい5時から7時の間に集中するので、季節によって色々な明るさの中でこの会話がはじまる。
あとどのくらい遊べるのか、その問いだけに全身を弾ませて出現する。
暑かったり、蝉時雨だったり、魔が刻だったり。
背景がどんなでも、知らない男の子と同じ目的で、向かい合って話せるというのは特別なことで、非常に美しいのです。
時間聞きの相手に選ばれることは何の役にも立たないし換金もできないけれど、なかなか恵まれた特権だと自負しております。
また、明日。
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