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執筆者の写真秋山妙子

「工芸品」老人ホームボランティア


老人ホームにボランティアに行ってきました。

涼しくなったとはいえ、夏。

桜の季節の午後には皆ティールームに出ていたのですが、

入居者の方の大半は、部屋に入って眠っております。

しずか。

ホームでの施術も、もう慣れたもの。

スタッフの方にご挨拶してタオルを2本貸してもらい、

おひとりおひとりの部屋のドアをそっとあけ、

起きてらっしゃる方がいらしたら、「いかがですか?」と声をかけます。

この日、うなづいてくださったのは2人。

だからゆっくり、施術しました。

お一方は非常に綺麗な網目のベストを着ています。

「かぎ針で、自分で編んだのよ、帽子やらベストやら、いっぱいあるわよ。毛糸も持ってきたけど、もうやる気が無くなった」

水色に銀のラメが入った毛糸で編んだベスト。

三角の編み目ひとつひとつが均一に膨らんで、雪の結晶が並んでいるみたいです。

こんなにふっくらと安定した編み目をずっと積み上げて、こんなに立派なベストを作るなんて、どんなに堅実な、良いお母さんだったのだろう、と考えながら、施術しました。

最後に代表の方から呼ばれ、

「大変申し訳ありませんが予算の関係で、秋山さんに交通費も出せなくなりましたので・・・・」

と今回にて終了のお話。

「交通費が出なくても、何かあったら呼んでください」

と話してきました。

高齢の方は、今までの知識や経験が完全に自由な好みの形で抽出されて形作られ、

一人一人の個性が際立っています。

清潔で小さく、完全に守られ、そして逃げられない設備の中で生活する彼らの造形的は個性は、

何度でも繰り返される話、新しく思い出される過去でいつも静かにうねっていて、

工芸品のように感じます。

もう一件、青山のホームへ、月に一度通うことになりました。

なにかしら、関わってゆけたらなと思っています。


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